ヒトクイマジカル 殺戮奇術の匂宮兄妹

書評

<内容>
永遠に生き続ける少女、円朽葉をめぐる奇怪極まりない研究のモニターに誘われた戯言遣いの「ぼく」は、骨董アパートの住人・紫木一姫と春日井春日と共に京都北部に位置する診療所跡を訪れる。
が、そこに待ち受けていたのは…。

<感想>
今回のテーマは、「生と死」なのでしょうか。
文章の至るところに、生と死について述べられているんですが、非常に考えさせられるものがありました。
人はなぜ生きているのか、なぜ死ぬのか…永遠に解けない問題な気がしますが、だからこそ考える価値があるのではないでしょうか?

今回は別れと出会いが多々あります。
その中で最たるのが、師匠と慕う姫ちゃんとの別れと、後に「ぼく」の敵となる狐との出会い…。
前者には喪失感を、後者にはこれから起こることへの期待感を覚えてしまいました。
戯言を操ることで積極的な生き方から逃げてきた「ぼく」の成長具合は、見ていて共感を覚えるところがあります。
1つの事件の幕を閉じるとき、次の事件の幕は開く…
次の作品が非常に楽しみな終わり方です。

(以下ネタばれ含むので、読む方は反転してお読みください)

姫ちゃんが壮絶な死闘の末、死亡…。
あれだけ純粋で無邪気で明るい娘の死は、読んで驚きと悲しみを覚えました。
と言うか、前々作からの登場人物がここに来て…かなり意表を突かれた感じです。
しかも、その理由が「すでに人を殺しすぎたから」「その生き方を変えられないから」とは…「ぼく」の言葉ではないけれど、姫ちゃんは本当に幸せだったんでしょうか?
人を殺す生活から、一般の日常生活を「ぼく」と送る日々…やはり、笑顔で人を殺せる習慣めいたことは消えてなかったんですね。
死闘の直前に、必死に伝えた「ぼく」への想い…それに「ぼく」が気づかない時、何を思い、感じ…そして戦い、死んでいったんでしょうか?
好きなキャラクターだっただけに、この死は非常にきついものがありました。

そして、今回登場した匂宮出夢・理澄。
二重人格として行動し、「ぼく」と接していただけに、姫ちゃんとの死闘で死を描かれたときは、これも驚いてしまいました。
強烈な印象を持つ人物が、こうも簡単に死んでしまうことなのかと…。
でも、最後に語られる真実は、これも本当に意表を突かれましたね。
一卵性双生児…確かに低くはあるけど、考えうることではあったんですよね。
こちらは、妹として、表の人格として存在していた理澄の死を、出夢がどう思うのか、今後どうするのか非常に気になります。
人を殺すことに飽き、表に出てこざるを得なくなった殺人者に、いったい何が残っているんでしょうか?
姫ちゃんの死とあわせて、残念でなりません。

そして、最後に西東天。
彼の望む物語とはいったい何なのか、彼の野望が達成されたとき何が起こるのか、非常に楽しみでもあり、不安でもあります。
「ぼく」がそれに勝つことが出来るのか…戯言遣いの本領を遺憾なく発揮してもらいたいです。
次巻で起こるであろう2人の戦い…今から楽しみにしていたいと思います。

評価
読みやすさ度★★★★☆
考えさせられる度★★★★☆
ためになる度★★☆☆☆
文章の綺麗さ度★★★☆☆
読了感度★★★★☆
総合評価★★★☆☆
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