嗤う伊右衛門

<内容>
幽晦との境界が、破れている。
内部の薄明が昏黒に洩れている。
ならばそこから夜が染みてくる…。
生まれてこのかた笑ったこともない生真面目な浪人、伊右衛門。
疱瘡を病み顔崩れても凛として正しさを失わない女、岩−
「四谷怪談」は今、極限の愛の物語へと昇華する!
第二十五回泉鏡花文学賞受賞作。

<感想>
「四谷怪談」と言うと、伊右衛門が岩を疎ましく思い毒薬を使ったり、間男をけしかけたりして家から追い出そうとし、死んだ岩が伊右衛門を祟っていって…と言うような話です。
正直そこには愛憎散りばめられたドロドロのお話と言うイメージしかありませんでした。
しかし、この小説はそんな印象を一気にぶち壊してくれました!
疱瘡に病むが、婿養子を迎えると言う考えは全くない岩。
そして、岩の父親からの頼みで婿養子になることになった伊右衛門。
結婚するまで互いの顔を見ることがなかった2人は、結婚後も意識のすれ違いから、夫婦としての仲が全く良くならない。
その時点で、伊右衛門の婿養子に入るときに決めた覚悟を疑ってしまった部分がありました。
普段は笑わない伊右衛門が岩と口論をすると言うのも新鮮な感じがあるとともに、ある種の不甲斐なさみたいなのを感じました。
そんな中、以前岩を狙っていた上役・喜兵衛の奸計に嵌り、2人は離縁することに…
お互いがお互いを想いながらも分かれなくてはならない2人、そして喜兵衛の愛人と知りながら娶った梅との暮らし…。
何が正しくて何が悪いのか、何が良くて何がダメなのか、そう言った想いが複雑に入り乱れましたが、最後を読んで全てスッキリしました。
「愛」と一言で言っても色々とありますが、非常に悲しく、そして美しい「愛」を描いた作品だと思います。

嗤う伊右衛門 嗤う伊右衛門
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著者名京極夏彦
出版社名中公文庫
角川文庫
C・NOVELS BIBLIOTHEQUE
中央公論社
出版年月2004年6月
2001年11月
1999年8月
1997年6月
ページ数381P
374P
386P
385P
ISBNコード4-12-204376-X
4-04-362001-2
4-12-500603-2
4-12-002689-2
価格580円(税込)
580円(税込)
1050円(税込)
1995円(税込)
評価★★★☆☆
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